木造建築物 耐震診断・改修に関する講習会 (神戸市 すまいるネット)
こうべまちづくり会館2階 2階ホールにて、神戸市耐震診断員の講習会にでておりました。
■講習会の内容
講演「耐震診断・耐震設計・耐震工事の留意点」
講師 佐久間 順三 様(有限会社設計工房佐久間 顧問)
▶「木造住宅の耐震診断と補強方法」委員 日本建築防災協会
▶「震災建築物の被災度区分判定基準および復旧技術指針」委員 日本建築防災協会
▶「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」委員 内閣府
大変意義のある講習会でした。
■耐震補強の概要説明
①建物倒壊のメカニズムとしては、変形が大きくなると柱が傾き重量をささえきれなくなり倒壊します。
(2階の重量を1階が支えきれなくなり、家屋が倒壊する場合が多い)
耐力要素として大きいのは、壁であります。壁の何が重要であるかというと
構造用合板にさしているN50の釘が重要であります。釘の踏ん張り(引き抜き力)により、建物は倒壊しなくなります。
②どれだけ、壁を補強しても、土台等が白蟻に食べられていれば、意味がなくなります。
白蟻の脅威は、取り除く必要があります。
③直下率といって、2階の壁の真下に 1階の壁が存在する割合を示す 指標が存在しているが、以前NHKのテレビ番組で直下率が高ければ建物は倒壊しにくいという発言がみられたが、これは、関係ないということです。京都大学の耐震の先生が、直下率は関係ないということを論文で実証しています。しかしながら、2階の壁と1階の壁がずれている場合は、2階の床(もしくは1階の天井)を構造用合板をはり、しっかりと、水平構面を固めて、2階の荷重が1階へながれる仕組みを作ることが重要です。1階に下屋がある建物が多くみられますが、下屋の部分の壁のみを補強しても意味がありません。下屋の天井をしっかりと補強して、2階の荷重が1階の壁に流れなければなりません。このような下屋の天井を補強していないで、壊れる状況は、Eディフェンスの、国の実験で実証されています。水平構面の適切な補強が耐震工事には必要です。
➂熊本地震の状況を、実際に現地にいかれて、どのような状態であったのか確認された知見を述べられていました。
2016.4.14 震度7 M6.5 の第一波地震
2016.4.16 震度7 M7.3 の第二波地震
これは第一波の地震の32倍の力であり、阪神大震災の1.2倍の威力の地震であった。
熊本地震の被害は、死者50人であり、神戸の地震に比べて、被害は抑えられたが、これは第1波が来た時に、住人が家から避難場所へ逃げていたことによるものが大きい。
実際につぶれなかった家を2つ、現地確認して、建物の図面をとりよせて、耐震診断をおこなったところ
評点が1.4 以上の建物は被害が存在していなかった。
評点が1.4以上の住宅を設計していけば、M7.3に耐えられる建物にあるという 一つの指標なのかもしれない。
よって、国が耐震等級3の設計を 促しているのもわかります。
■まとめ
・1階部分の耐力壁を中心にバランスよく壁(釘のピッチを狭くした構造用合板の壁)を補強すること
・蟻等食害による建物の劣化部分を改善すること
・鉛直構面の壁だけでなく、水平構面の床や天井も力の流れを考えて適切に補強すること
・耐震等級3を指標に耐震補強していくこと
以上の点を注意して、業務を行ってまいります。